ナガノ日記

備忘録

移住を目的にする人とは距離をとる


2020/03/04
 
『フルサトをつくる』(伊藤洋志・ pha)を読んだ。

僕も世間からは移住者と言われがちな立場で、小さなイベントでスピーカーをしたこともある。個人的には交通の便と店を開く立地が現時点で最適だと思い、引っ越してきただけなので「移住」がしたかったわけではない。

何年かが過ぎ、順風満帆とはいかないまでも、この地で暮らす人たちとそれなりに繋がりも生まれ、かろうじて生活をしている。

そんなわけで、移住本としては定番となっている本書は以前から気になっていたが、私は移住のつもりがなかったので読まずにいた。

が、これは大きな勘違いであった。

本書では、現代社会におけるそれぞれのフルサトを、自分に合わせてつくっていくことについて考えていきたい。これは、ちょっと気を張らないとやっていけない資本主義経済世界に大なり小なり関わって生きている現代人が、完全自給自足のコミューンまで目指さなくても、まあぼちぼちですな、というぐらいで生きていくための基盤になると考えている。

大事なのはそれぞれが自由意志のもとで暮らして、お互いに協力できることがあれば適宜していけばよい、という感覚である。だからといってコミューンみたいに移住者だけで地域づくり組織とかつくっても意味がない。それは都市の企業を移植しただけである。単一の価値観でまとまった組織には寿命がある。そしてその寿命がどんどん短くなっているのが2014年の現在なのである。人間の寿命のほうが長いのでそういう組織はあまり当てにできない。


結果的に移住した、ぐらいがちょうどいい。いきなり移住もよいが、本書のような中間的段階があってもよいと思う。今は0か1かという思考が多すぎる。これは極端だし思考放棄だ。
今の僕ははまさに「結果的に移住した」というような状態になっている。伊藤氏とpha氏のバランス感覚は素晴らしく深く頷きならがら、今までやってきたことの答え合わせのような気持ちで読んだ。

もちろん二人はわきまえているのだろうけど、地元に人たちへの敬意というか、この土地を守ってきてくれた人がいて、その自然や環境を享受させてもらっているという、謙虚な気持ちを忘れずにいたい。